第3号 AI(人工知能)は本当に必要?

2021-02-03(公開:2019-07-03)

※2019年7月3日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2021年2月3日に再度公開しました。


AI(人工知能)の企業導入が急速に広まっており、多くの成功事例を目にすることで、前回の「AIのダメな子?できる子?」ブログでは、AIは活用次第では大きなメリットをもたらすと書きました。しかしその反面、AIの導入が企業にとってはデメリットをもたらす場合もあるので、失敗事例も存在します。失敗事例を見ると、企業で導入するのであれば、目的を明確にしているのでは?と考えています。そこで、失敗はどのような形で起きているのか、調べてみました。

AIは本当に必要?

1. 本当にAI(人工知能)が必要なのか?

AIの人気が増えている中、「AIで何かしたい」と考える人は少なくないかと思います。その中でも、明確な目的や課題を持った人はAIの可能性や必要性を考えて検討しているかと思います。ただし、「AIで課題を解決したい」といった目的がただ単に「AIを使いたい」に変わってしまうと、 課題の解決方法としてAIが最適ではなくても導入してしまい、結果として失敗に繋がってしまうことがあるようです。AIの導入を検討する前に、「AI(人工知能)」といった単語に振り回されないように、他の方法で課題を解決・改善できないか、そして本当にAIを導入する必要があるのかを見極める必要があるようです。


2. AI(人工知能)導入の現実

それでは、AIを導入して、企業はどのように失敗したのでしょうか。失敗事例と言われるのは、 AIが課題を解決できなかったということではなく、費用面での失敗や、学習データ量が不十分であることにより失敗に繋がったものです。例えば、ある中古車企業では人間の代わりにAIを活用して、お客様の要望に合った車をレコメンド(提案)するシステムを導入していました。レコメンドの精度は高いと評価されており、素早く提案ができたため、作業の効率化も実現されていたようです。ただし、この作業は表計算ソフトを活用して精度の高いレコメンドを実現することができると判明し、AIの導入は必要なかったことが後から分かりました。これは、費用面でAIの導入を失敗してしまったということです。また、AIはすでにあるデータを機械学習して賢くなるため、活用する際は学習させるための大量のデータを準備する必要があります。学習データが少なければ少ないほど、AIを活用しても期待する結果を得ることは難しいと言われています。


3. AI(人工知能)の活用事例

ここまではネガティブな内容でしたが、実際にAI導入に成功した活用事例を見ていきます。

3-1 ECサイトでの利用

ECサイトでは、接客から集客分析を行うAIを活用したサービスが提供されています。例えば接客を行うAIの場合、サイト上でみられるユーザーの行動や、流入経路、よく閲覧される商品、過去の購入履歴などの情報をもとに、そのユーザーに合わせた商品を提案したり、クーポンを発行したりできます。さらに、ファッションECサイトではAIにプロのスタイリストのセンスを機械学習させて、ユーザーに合わせたコーディネートを提供するサービスもあります。集客分析を行うAIの場合、ユーザー情報をもとにサイト状況を分析し、問題点を可視化するサービスがあります。このようなサービスは、提供内容がお客様の課題に一致しやすい上に、パッケージ化されているシステムなので、開発費用が大きく発生することはありません。

3-2 農業での利用

農家の高齢化や人手不足が進行している中、AIを活用して農業をサポートする「AI農業」が注目されています。AI農業は、AIを活用して、可能な限り農業の作業を自動化する取り組みです。例えば、クボタさんの「農機自動運転」トラクターは、GPSを駆使して無人で農作業を行うことができます。その上に、農場の土壌などの細かな状態をAIが機械学習することで、従来人間が決めていたトラクターのルートをAIが決められるように目指しています。

3-3 ビックデータの分析

金融業界や投資家は、AIを活用してソーシャルメディアのつぶやきや、天候、衛星画像など広い範囲のデータ(オルタナティブデータ)の収集と分析を行い、そのデータを利用しています。さらに、マーケティングツールと連携して活用することで、ユーザーの関心度を可視化し、オートメーションシナリオの設計を完全自動化しています。

3-4 テレワーク・リモートワークでの利用

昨今のご時世により、多くの企業が在宅勤務に取り組み、テレワークの導入も急速に進みました。それに伴い、テレワーク支援サービス、特にAIを活用したテレワーク支援ツールが注目されています。例えば顔認証AIを活用するクラウド型テレワーク支援ツールは、パソコンの前にいる社員の本人確認を行い、作業時間・休憩時間を自動的に集計することで、管理者が社員の残業時間等を簡単に把握できるツールです。また、覗き見やなりすまし検知機能も備えているので、テレワーク中のセキュリティ強化を実現できます。実際の利用者からは「自宅にいるときの方が席を離れることが少なくなった」という声が挙げられています。他にも営業に特化したAI搭載クラウドIP電話などがあり、これは営業電話の内容を自動テキスト化し、CRM(顧客管理)へ自動入力することができます。実際に導入された企業は「CRMやSFA(営業支援システム)への手動入力作業がなくなったため入力コストが軽減された」と評価しています。


4. 家庭で使われるAI(人工知能)

ここまでは主にビジネスシーンや産業に寄り添うAIの活用について紹介しましたが、一般家庭にもAIは浸透しています。よく知られているものとしてAIを活用したエアコンがあり、毎日の室内温度や使用パターンを学習して、利用者の好みの温度を予測してくれます。他にも、食材条件に合わせて料理を提案してくれるオーブンレンジや、洗濯時間や内容をAIが決定してくれる全自動洗濯機など、様々な形でAIが家庭を支えています。


5.まとめ

AIは少しずつ我々の日常生活に現れてきており、実際にビジネスシーンから家庭まで、様々な場面で利用されていることが分かります。それぞれの活用事例には明確な目的があり、AIは課題を解決するツールとして多方面から大きな期待が寄せられています。しかし実際には、AIは導入するだけであらゆる願いを叶えてくれるような全知全能のツールではなく、開発コストやデータ量など様々な条件が整っていないと有効に活用できないことが現実です。また、求めている成果を得るソリューションとしてAIが本当に最適なのか、導入を検討している方は改めて考えてみる必要があるかもしれません。AIがあるから良い結果が出るのではなく、目的に合わせてAIを的確に運用することが大切です。